AI活用が進む“仕掛け” ── 会社をBAKUSOKU化した4つの取り組み
こんにちは、AnotherBall CTOの @tatsushim です。年末なので、今年の振り返りとして4月~6月にAIで会社をBakusoku化した取り組みをご紹介します。
私たちのチームは全社で約30名程度なのですが、今回の取り組みを始める前は「一部の人だけがAIを使う」状態で全社的な活用には至っていませんでした。Google FormでAI活用についてアンケートをとったところ
- ChatGPTは無料版を使い続けている
- ChatGPT以外のAIツールは触ったことがない
という方もいる状況で、少しショックでした。
しかし、AIによる生産性向上は自明です。全社をあげて施策を行った結果
- 「AI前提」で業務に取り組むようになった
- 「AIができること・できないこと」の感覚を持てるようになった
- 「まずAIでやってみよう」という言葉が自然に出るようになった
といった声をもらうまで組織をアップデートできました。特に、非エンジニア(マーケティングやHR、バックオフィスなど)のメンバーの生産性向上は非常に大きなものでした。
以下では具体的に私たちが実践したことをご紹介します。
BAKUSOKU化させた具体的な取り組み内容
1. スローガンの設定 ── Bakusoku AI 10x
AI活用が遅れることは、スピードが命のスタートアップにとって大きなリスクです。
そこで雰囲気を一気に変えるために、「AIの活用によって10倍のチャレンジをしよう」というコンセプトで Bakusoku AI 10x というスローガンを掲げました。 (Yahoo! JAPANが過去に掲げていた「爆速経営」からのオマージュです)
単なるスローガンのように思えるかもしれませんが、明示したことで「中途半端な取り組みではなく、全社としてコミットする」という強いメッセージを伝えることができました。
2. AIについて話す場づくり
スローガン掲げたと同時に、社内の定例活動の中でAIについて話す場を設けていきました。上手くAIを活用した事例を社内LTという形で紹介してもらったり、特定のツールのワークショップを開いたりしました。
中でも特に効果があったのは、AI Mingle という取り組みです。
朝礼のタイミングで2〜3人のグループをつくり、前日のAI活用を2分でシェアするというものです。
「AI Mingleでシェアしたい(逆に言えば話すことがなくなるのは避けたい)」という気持ちが、日々AIを活用する習慣づくりに自然とつながりました。
そしてこの施策は前述のスローガンと強いつながりがあります。AI活用をシェアしてくれたメンバーに「それ、BAKUSOKUじゃん!」と言える(言われる)場をつくることでスローガンもより浸透していきます。
また、Slackに #random-ai-lab チャンネルをつくり、リモートメンバーも含めて非同期で日々のAI活用を共有しました。
3. AI活用を称賛
メンバーのAI活用を、トップダウンと横のつながりの両面から称賛できないかと考えました。
そこで、経営陣は毎日1件投稿をピックアップして称賛し、組織全体のAI利用を後押しし
一方で、AIを活用した人に「Bakusoku AI 10x」と書かれたシールを配布し、集めて競い合うAI HEROsという仕組みを導入しました。 従業員同士で誰かにシールをあげたり受け取ったりできるため、
- 「その活用方法はすごい!Bakusokuだ!」と称賛される体験
- ゲーム感覚でシールを集める楽しさ
が組み合わさり、モチベーションを高める仕掛けになりました。
4. 実務を個別撃破
ここまでの施策でAI活用が自然に進む人もいましたが、バックオフィスやマーケティングなど、分野によっては活用方法に悩むこともありました。
そこで、AI活用が得意なメンバーが一緒に課題解決に並走することにしました。
例えば、Social Mediaチームではコンテンツのプランニング、構成案出し、投稿後のデータ分析を、それぞれ属人的に対応していました。 そこで担当者がCursorを使ったワークフローを共に構築し、企画〜分析までを一連の流れとして回せるようになりました。
その結果、企画工数の短縮と分析の粒度向上を実現できました。一見、愚直でスケールしない施策に見えますが上手く行く例が出るとそれを横で真似たり、お互いが教え合ったりということが生まれるので、やる価値は大いに合ったと感じています。
定量・定性での評価
「AI活用が進んでいる」ことを定量的に評価するのは難しいですが、私たちは四半期で次の指標を設定しました。
- 全メンバー(100%)がAI関連の発信(LTや #random-ai-lab への投稿)を経験すること
- Slackの #random-ai-lab チャンネルに毎日5件以上の投稿が継続的に行われること
1を設定した理由は、私の中で「全社でAI活用を浸透させた」と言えるためには、全員が発信者になる必要があると考えたためです。また、メンバーからの自発的な投稿が生まれることも重要だと感じたため、2を設定しました。
結果として、1と2の両方を達成し、20営業日で合計150件(1日あたり7.5件)の投稿が生まれました。
さらに、定性的な変化としてメンバーのAIに対する意識も大きく変わりました。
冒頭でお伝えした通り、四半期終わりには
- 「AI前提」で業務に取り組むようになった
- 「AIができること・できないこと」の感覚を持てるようになった
- 「まずAIでやってみよう」という言葉が自然に出るようになった
といった声をもらうことができました。
現在は部署ごとに具体的なワークフロー改善も進み、AI活用が「個人の工夫」から「組織の文化」へと進化していきました。
プロジェクトに割いたリソース
この取り組みは私と組織開発担当者の2人で推進しましたが、経営層のコミットメントと熱量のあるメンバーがいたからこそ実現できました。リーダー層が「まず踊っている人」としてAIに熱狂し、「二人目のダンサー」を施策や個別アプローチで生み出すことで、周囲も自然に追従するようになりました。
AIツールと予算の策定
弊社がチームメンバーに利用補助をしている代表的なツールの一部をご紹介します。
- Canva
- ChatGPT (Codex)
- Claude (Claude Code)
- Cursor
- Gemini
- Grok
- Manus
- Notion AI
この中にはメンバーからのボトムアップで採用したものもあります。ツールについて提案があったものは、まずは使いたいメンバーに会社が補助を出す形で試してもらい、良さそうであれば全体へ展開する形をとっているため、新しいツールを使ってみようというハードルをできるだけ下げています。
予算についてはケースバイケースの判断で、明確に最初から確保しているわけではありません。
また、年間契約はしないようにしています。新しいモデルやツールが日々更新されているので、ベストなツールも日々変わっていくからです。
まとめ
AI活用は「制度」や「ツール導入」だけでは文化になりません。
- 全社を巻き込むスローガンを設定
- AIについて話す場づくり
- AI活用を称賛
- 実務を個別撃破
こうした取り組みを日々積み重ねていくことで、AIが当たり前に使われる組織へと着実に近づいていきます。
さいごに
本投稿では今年前半に取り組んだAI活用が進む仕掛けについて共有させていただきました。夏から現在にかけて取り組んでいるAI活用はまた別の機会にご紹介したいと思います。
AnotherBallでは最新技術を活用し、日本が誇るエンタメ文化を軸に世界へ挑戦したい方を募集しております。絶賛採用中ですので、ぜひこちらを覗いてください。日本にとどまらず、世界で勝つプロダクトを一緒に創りましょう!以上、 @tatsushim がお送りしました!